創建当時の姿に駅舎が復元され、新たな首都の人気観光スポットになったJR東京駅周辺で、放置自転車が急増している。通勤範囲の湾岸部でマンションが増えたことなどが影響している。お膝元の東京都千代田区は、駐輪場を増やす一方、「取り締まり」を厳しくする両面作戦で、新年度から対策に本腰を入れ始める。 (井上幸一)雨の日の東京駅八重洲口周辺。大丸東京店(千代田区)前の歩道には、十数台の自転車が無造作に置かれていた。近くの宝くじ売り場の女性(32)は「放置自転車が増えている。朝、出勤のために置いていく人もいれば、買い物のために止める人もいるね」と話した。毎年、十月の晴れた平日に実施する都の調査によると、東京駅周辺の放置自転車とバイクの数は二〇一一年には八百三十台で、赤羽駅(北区)に続いて都内の駅周辺でワースト二位。〇七年の三十六位から一気に上昇した。駐輪場の整備が進んで都内全体では減少傾向にある中、高止まりしている。千代田区によると、背景には、近隣の晴海、豊洲地区などでマンションの開発が相次ぎ、住民が丸の内や大手町に自転車で通っている状況がある。健康志向が高まり、人気を呼んでいるようだ。放置自転車は災害時に交通の障害になり、美観も損なう。千代田区は一一年に、駅南側の鍛冶橋高架下に百三十四台収容できるコインパーキングを整備。さらに、新年度は東京駅北側の大手町の区道に、コインパーキング式駐輪場約百八十台分を新設し、六~七月に運用を開始する。合わせて、両駐輪場から半径約二百五十メートルの地域を、区条例の「放置禁止区域」に指定する予定。区域内の放置自転車は警告札を張ってから一~二時間で移動させる「即時撤去」が可能になるからだ。「区民でない人が置いている。クリーン作戦を展開する」と、石川雅己区長は厳しい姿勢で臨む姿勢を示す。ただし、当面、放置禁止区域は駅中心部に及ばない。都心の一等地だけに、区単独の駐輪場用地確保には限界もある。石川区長は「少し、企業側にも汗をかいてもらいたい。積極的に敷地を開放してもらうようJRとも話をする」とし、駅周辺全体での取り組みが不可欠とする。また、区の担当者は「駐輪場に止めない人もいる。マナーの問題は残る」と話す。東京都と警視庁は先月、千代田区やJR東日本、国土交通省、地元商店会などと連携する「東京駅周辺放置自転車対策会議」を発足させた。問題解決に向け、本格的な協議は始まったばかりだ。
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